夢の欠片 ~カタチあるもの~
無意識に呼吸を止めてしまっていた。
やばい。陽菜の話では感情が抑えられなくなるって言ってたし、正直、どうなるかすごく怖くなってきた。
不用意にCDを置きっぱなしにしていた自分を恨んだ。
とっさに耳を塞いだ。
聴こえなければいいんだ。
『──────』
ついに音楽が流れだした。鳥肌が止まらない。
「───」
真弓お姉ちゃんがこちらに笑って語り掛ける。
伝えなきゃ。それ以上この音楽をきいちゃダメだって。
だから私はがばっと、起き上がった。
それがいけなかった。私は貧血のような瞬間的な眩暈を起こして、倒れかけてソファに手をついた。
自由になった私の耳は、CDに閉じ込められた響きをあますところなく聴き取った。
『未来の自分に宛てて書く手紙なら きっと素直に打ち明けられるだろう』
「この曲って」
「んー、懐かしいー。いつ聴いても、いい曲はいい曲のままね」
気持ちが落ち着く。
張りつめていた心がぬるくほどけていく。
『今 負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな僕は』
「ん? なんか懐かしい」
音楽に誘われるように羚弥くんもやってきた。
この曲が終わるまでそっと三人寄り添って聴き入っていた。
『誰の言葉を信じ歩けばいいの?』