夢の欠片 ~カタチあるもの~
目が覚めると、なんだか晴れ晴れとした爽やかな気持ちに浮かされて、窓をいっぱいに開ける。
秋の冷たさが私の頭の中をさらっていく。
さっぱりとした朝に、気持ちは落ち着かされた。
なにをあんなに慌ててたんだろうな。
昨夜のことを思い返すと、少し笑えた。
都市伝説みたいなCDを本気にしちゃってたんだもんなぁ。
CDはすぐに陽菜に返そう。別のクラスだけどいい合唱になるといいな。
まずは、神永くんに話を訊こう。
誰にCDを貸してもらったのか。
そこだけでも十分に核心に迫れるはずなんだ。
焦って冷静さを欠くといいことが一つもない。
「よし! 今日はなんだかいい日になるっ!」
早起きの朝は今、始まった。
今日は長い一日になりそう。
はずんで階段を下りると、羚弥くんがもぐもぐ朝食を食べていた。
「おっはよ! 羚弥くん」
「んぁ。優奈おはよ……」
まどろんで挨拶はかえってきた。
「おはよー優奈ちゃん。今日は二人とも早いねー? もしかしてデートとかー?」
「そ、そんなこと、な、いです」
私と羚弥くんは互いに顔を伏せた。
耳まで赤くなりそうな気持ちを閉じ込めてはおけなかった。
「大体、学校あるし……」
「今日は開校記念日で休みだぞ」
「え」
マジか。
いつかの羚弥くんの言葉を借りました。
「生徒手帳とか学年行事のプリントに書いてある」
「えぇぇ……。せっかくやる気出てたのにぃ」
「お知らせのプリント張られてたじゃん。……まぁ、そんなとこいちいち見ねぇよな」
ご飯を食べ終わると羚弥くんは眠そうに「二度寝するー」と一言残して早々に部屋に戻っていった。
ため息を一つ吐く。すると真弓お姉ちゃんが「また音楽でもかけよっか」と気を利かせてくれた。
でも、この家で数か月暮らしてるけどCDなんてあったかな。
私はオーディオコンポ自体どこにあった知らなかったし、まだまだ知らないことは多いってことか。
「このコンポもねー、お父さんの趣味なんだけどね。使わなくなってしまってたんだー」
事故で亡くなった真弓お姉ちゃんの両親。
今まできいたことことなかった。
触れにくい話題だったし、いつも通りに喋っていてもどこか寂しげに見えた。