夢の欠片 ~カタチあるもの~
私は小気味いいノック音に誘われて目を覚ますことになった。
誰だろう。真弓お姉ちゃんかな。
そうしていつかのデジャヴ。『どんな夢だったっけ』
奇妙に高揚した胸が、警鐘でも鳴らしてるみたい。
突っ伏した状態から少し頭を上げると自分の目の前に立っていた人物が喋った。
「おはよーさん、じゃ、今日やったとこの漢字の書き取りね。十回ずつ」
「……千藤先生!?」
誰かが堪え切れずに噴き出した。
それを合図にクラスには笑いの渦が出来上がった。
私はまだポカンとして置いてけぼりのままだった。
「勉強のし過ぎか? でも寝るのはよくないな」
そうか、今は四時間目の国語の授業だ。
簡単で退屈だなぁなんて油断していたら居眠りしてしまうとは。
平和だな、秋篠高校一年一組山辺学級。