夢の欠片 ~カタチあるもの~
振り向くと、同じような背丈の男の子が私を支えてくれていた。
中性的な顔立ちで、私を抱えていた腕も思ったよりはほっそりして見えた。
男子は見た目とかは関係なく、みんな力が強いものなのかもしれない。
「今日は暑いからやられちゃったのかな。少し休んだほうがいいね」
「ありがと。でも、もう大丈夫そう」
もうしっかりと身体に力が入っていた。むしろさっきの貧血が嘘みたいに、私はなんともなかった。
「咲森さん?だっけ。気をつけなきゃだよ」
「えっ? 名前、なんで? どこかでお話ししたっけ?」
「合唱コンの委員会で近くの席に座ってたんだけど、気付かなかった?」
「えーっと……。ごめんね。全然覚えてない」
彼は爽やかに歯を見せて笑うと教師を真似て言った「正直でよろしい!」
記憶力には自信があったんだけど全く思い出せない。
ああ、失礼なことしちゃった。今度からは一人たりとも聞き逃さないようにしよう。
「ごめんね、何組かな? 思い出すから!」
「もう、いかなきゃ」
「えっ」
親切な男子はたちまち駆け出していく。
「ごめん、そろそろ! じゃあ、また!」
細身の彼は振り返りつつ裏門へと見えなくなった。