Dream
「いや、わからねぇけどな?」
そういえばずっと藤崎くんと呼んでいて、下の名前はマドカ本人によって知らされたからなぁ。
マドカをどう漢字で書くなんて、考えていなかったよ。
藤崎円って言うんだ…。
「桐野くん凄いね」
「ん?
あ―…。
俺とマドカ、中学同じだから」
「え?」
ま、まさかの共通点!
「だからマドカは知っていたんだ。
桐野くんが警察に補導されたこと」
「ん…まあね」
桐野くんは寂しそうな笑みを浮かべた。
「あ…ごめんなさい」
「別に謝ることないよ」
「…もう、諦めているから」と桐野くんは呟いた。
聞こえていないと思っているかもしれないけど、私はちゃんと聞いた。
何を諦めているんだろう…?
私はまだ、桐野くんについて、何も知らない。
最近はマドカと付き合っていたから、桐野くんについてなんて考えていなかった。
一時期は桐野くんを“過去の人”と捉え、忘れようとさえしていた。