Dream







「いや、わからねぇけどな?」



そういえばずっと藤崎くんと呼んでいて、下の名前はマドカ本人によって知らされたからなぁ。

マドカをどう漢字で書くなんて、考えていなかったよ。

藤崎円って言うんだ…。



「桐野くん凄いね」

「ん?
あ―…。
俺とマドカ、中学同じだから」

「え?」



ま、まさかの共通点!



「だからマドカは知っていたんだ。
桐野くんが警察に補導されたこと」

「ん…まあね」



桐野くんは寂しそうな笑みを浮かべた。



「あ…ごめんなさい」

「別に謝ることないよ」



「…もう、諦めているから」と桐野くんは呟いた。

聞こえていないと思っているかもしれないけど、私はちゃんと聞いた。



何を諦めているんだろう…?



私はまだ、桐野くんについて、何も知らない。

最近はマドカと付き合っていたから、桐野くんについてなんて考えていなかった。

一時期は桐野くんを“過去の人”と捉え、忘れようとさえしていた。







< 108 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop