Dream
「コンクールは桐野を除く部員だけで出て、桐野はすぐに入院したから、声が完全に出なくなったわけではない。
でも、医者から演劇をすることを止められたんだ」
そんなっ…!
「それからだよ。
桐野が徐々に休みがちになって、今じゃ不登校だ。
一時期は保健室登校をしていたみたいだけど、すぐにやめたらしい」
…初めて知った、桐野くんの過去。
「コンクールを桐野抜きで出たのは良いが、コンクールの審査員たちにはかなり失望させたみたいだな。
元々桐野1人でもっていた部活だったし。
審査員たちから色々言われた部員たちは、役者としては再起不能だと言われた桐野を、責めてしまったんだ。
お前がいないから、負けたんだってな…」
「そんな…。
桐野くんだって、出たかったはずなのに!」
「部員たちもわかっていたんだ。
桐野のせいじゃないって。
でも、桐野を責めずにはいられなかったらしい」
桐野くん…。
「…桐野の話で、オレが知るのはここまでだな。
もしこの後が気になったり、詳しく聞きたかったら、桐野自身に聞け。
アイツたまに成宮総合病院に通っては現実を突きつけられているみたいだからな」
現実を突きつけられている…。
それは、沢山頑張ってきた演劇を出来ないと言う現実…。
私は本の整理を続ける先生にお礼を言い、図書室を、学校を飛び出した。