Dream
「私知っているんだよ!
桐野くんが去年まで土木沢の生徒で、演劇部だったってこと!
それで、声が出なくなったってこと!!」
私が叫ぶと、桐野くんは寂しそうに笑った。
「…バレ、たんだ…」
桐野くんは私から目を逸らした。
「…そうだよ。
俺は土木沢高校の2年生で、元演劇部。
中学の頃は警察沙汰になって、今は不登校。
…駄目な人間でしょ、俺って」
「駄目じゃない!」
「…」
「桐野くんは駄目な人間じゃないよ!
だって本当に駄目な人間は、人を応援なんて出来ない!」
「ユメ…」
「辛かったでしょ?
私の応援して。
諦めるって言ったときだって。
それなのに桐野くんは応援してくれた!」
「それは…。
ユメには、諦めてほしくなかったから。
俺だって、諦めたくなかった。
でも、これ以上続けたら、日常会話も出来なくなるって。
諦めたくはなかったけど、諦めざるを得なかった。
ユメはその点、まだ夢を持ち続けていられるはず。
俺みたいに失ったわけじゃないから。
ユメには、諦めてほしくなかった」
桐野くん…。
私は涙を拭った。