Dream
「うっ…。ご、ごめん」
「図書室でうるさくした罰。
さ、前髪下ろしてみて?」
「え?
罰で何で下ろすんだよ」
「見たいから。
ほらほら、早く下ろして!」
「ユメ。
初対面の時と態度違くないか?」
「気にしな~い気にしな~い。
ほら早く!」
「…めんどくせ」
文句を言いながらも、桐野くんは右手で前髪を下した。
「…そりゃ確かに見えないわな」
「だろ?」
前髪を下した桐野くんの前髪は、確かに長い。
パッチリとした二重の瞳が、殆ど隠れてしまっている。
これじゃ前が見えない。
その上、前髪から少しだけ見える目つきは悪くて。
これで会うのなら、怖気づいてしまうだろう。
「戻して良いよ。
私のお願い、聞いてくれてありがとね」
「ん」
桐野くんは短く返事すると、右手でふわっ…と前髪を上げた。
その姿が、妙に綺麗で。
…男子に“綺麗”は失礼かもしれないけれど。
本当に綺麗だったんだ。