Dream
5~辛い気持ち~
放課後。
私は舞耶たちと別れた後、図書室へ向かう道を歩いていた。
グラウンドでは部活を始める運動部たちが、それぞれ準備を始めている。
しかし図書室がある別館へ進むにつれ、徐々に人は少なくなり、別館の下では誰の声も聞こえなくなった。
聞こえるのは、風で木々が揺れるカサカサと言う音と、小鳥の鳴き声だけ。
それ以外は音のしない、本当に静かな場所。
それなのに、桐野くんは図書室へ現れる。
目的がなくちゃ、来ようと思わないだろう。
その上図書室は別館1階の1番奥にある。
手前に授業で使うような音楽室や理科室などがあるので、1番奥にある図書室へ行くのは、図書室に用事がある人だけ。
私はガラガラといつもの音を立て、中へと入る。
相変わらず人気(ひとけ)のない、静かな場所。
「…ユメ」
昨日と同じところから、桐野くんは顔を出す。
手には相変わらずの本の山。
そして変わらない私服姿。
桐野くんは学校内にいるにも関わらず私服だ。
そしてどの私服にも、変わらずあるのは、首元をあたためるもこもこ。
色は毎日違うのに、もこもこがあるのは変わらない。