Dream







「ならお引き取り下さい。
夢子ちゃんは僕の彼女なので」



マドカはきっぱり言い放つ。

桐野くんは再びふっと笑う。



「そうでしたか。
幸せそうなところ、お邪魔しました。

…では、お幸せに」



そのまま桐野くんは踵を返し、歩き出す。

まもなく人混みに紛れ、姿は見えなくなった。




「…全く。何なんだアイツは」



マドカは少し怒っていた。



「ごめんマドカ。
私がしっかりしていないからだね」

「夢子ちゃんは悪くないよ。
僕も夢子ちゃんを待たせたからね。
今度から夢子ちゃん、僕の傍離れないで」

「うん」



マドカは再び私の手を握り、桐野くんが消えた人混みとは逆の方向へ歩き出す。


その後マドカは何事もなく、私へ付き合ってくれたお礼を述べた。

私は笑顔で「困った時はいつでも相談してね」と返した。


見ていたのはマドカだけど。

心の中には、桐野くんのアノ寂しそうな笑みが離れない。



桐野くんは一体何がしたいのだろうか?

私の告白を断っておきながら。



本当に、

謎が多い人ね。







< 59 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop