Dream
「ならお引き取り下さい。
夢子ちゃんは僕の彼女なので」
マドカはきっぱり言い放つ。
桐野くんは再びふっと笑う。
「そうでしたか。
幸せそうなところ、お邪魔しました。
…では、お幸せに」
そのまま桐野くんは踵を返し、歩き出す。
まもなく人混みに紛れ、姿は見えなくなった。
「…全く。何なんだアイツは」
マドカは少し怒っていた。
「ごめんマドカ。
私がしっかりしていないからだね」
「夢子ちゃんは悪くないよ。
僕も夢子ちゃんを待たせたからね。
今度から夢子ちゃん、僕の傍離れないで」
「うん」
マドカは再び私の手を握り、桐野くんが消えた人混みとは逆の方向へ歩き出す。
その後マドカは何事もなく、私へ付き合ってくれたお礼を述べた。
私は笑顔で「困った時はいつでも相談してね」と返した。
見ていたのはマドカだけど。
心の中には、桐野くんのアノ寂しそうな笑みが離れない。
桐野くんは一体何がしたいのだろうか?
私の告白を断っておきながら。
本当に、
謎が多い人ね。