Dream







だから?

だから桐野くんは、自分が何者なのか話さなかったの?



自分が…

男の子を死なせた犯人だから…。




「桐野は決して人殺しではない。
でも、危険人物だってことは…覚えていてほしい」



切ない目で、マドカは私に訴える。

あの綺麗だけど黒い瞳を持つ桐野くんとは、正反対の美しい瞳。



「ごめん…。
夢子ちゃん、友永さんが言っていたけど、桐野大貴と楽しそうにショッピングモールで話していたんだろ?
本当はこんなこと言いたくないけど…。

夢子ちゃん。
これからは桐野大貴に近づかないで。
僕の傍にいて。
…夢子ちゃんを、守りたいんだ……」



ギュッと、大切なモノを抱えるような抱きしめ方。

私も無意識のうちに抱きしめ返していた。



「夢子ちゃん…」

「ありがとう、マドカ。
私…マドカの言う通りにするね」

「ありがとう夢子ちゃん。
…そうだ、メルアドと番号交換しよう?
何かあったら、すぐに連絡できるようにさ」

「うん」



私はスマホを取り出し、メアドと番号を交換した。



もう…忘れよう。

マドカだけを…好きになろう。





桐野くんのことは…

忘れよう……。










< 73 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop