偽恋♥とらいあんぐる。〜義理チョコの答え〜
「ぅ"…..ひっく…うっ…ひっくぅ…..」
誰もいない校舎裏。膝を抱えて蹲る、あたしの泣き声だけが虚しく響き渡る。
『お前泣いてんの?』不意に声をかけられた。
『ふぇ!?』思わず声をあげた。顔を上げれば目の前に、見知らぬ男子が立ってたから。
あたしは慌てて涙を拭い、顔を隠した。
『やっぱり泣いてるじゃん。酷い顔。』
しんみりムードなどお構いなしに、少年は怪訝そうな表情であたしの顔を覗き込んだ。
『な"泣いてるレディに失礼!君の顔面の方が酷いから。』顔など見てないけれど。
どこの誰か知らないけれど喧嘩上等。鼻声になりながらも少年に人差し指を向け対抗する。
『君、女の子だったんだ。』なんて棒読み台詞。
『ふ、ふざけないでよ!』目を擦り一気に立ち上がると、思わず叫んでしまう。
『え、今のは冗談だけど?…もしかして面白くなかった?!』
デリカシーの欠片もないジョークだなぁ、おい!
『ギャグなワケ?ちっとも面白くないから!』他にも言ってやりたい事はあったけど、
究極のスマイルでこちらを見つめるから何も言えなくなる。
…こいつはあれだ、失礼を言っても無自覚なド天然だから許される。
世で言う“憎めない奴”ってタイプ。
少年はあたしの険しい表情で何かを察した様に思えたが、何処か嬉しそうにおもむろに口を開く。
『なんだ、元気そうじゃん。』
---━━あれ、ホントだ。
零れた涙はすっかり止まっていて、不思議と心が軽くなってた。