【短編】毒舌教師の甘い罠
「どうした?勉強がつらいか?」
普段はなんでも見透かしてくるくせに、こういうときだけ鈍感なこの男が憎い。
夕暮れでオレンジ色に染まる教室に、あたしの鼻をすする音だけが鳴り響く。
「そんなにつらいなら、2週間に1回にするか?この補習」
こういうときだけ優しくする、そういうところがずるいって言ってるの。
「違うの…」
「ん?」
「そうじゃないの」
違うんだよ、翔ちゃん。
あたしは、ただ。