軌跡ーキミトノオモイデー
それから1年の月日が過ぎていった。










「京輔ぇっ!絶対に俺、お前のこと忘れないからなぁっ!」




「大げさだろー」




卒業式が終わった俺らは、教室で別れを惜しんでいた。




この中学へ通うのももう終わり…




そう思うとすごく切なくなった。




皆帰った後、俺は最後まで一人、教室に残っていた。











俺は、高校ではこの土地を離れる。




友達とも…誰とも一緒じゃなくなるだろう。





もちろん…未風、とも。




「…帰るか。」




俺は思い出溢れる教室をようやく出た。











そんな時だった。




「あ、あれは…!!」




下駄箱に入っていたのは…




しばらくぶりの未風の小説だった。




下駄箱には未風の姿はなく、ただ小説だけが残されていた。







手に取ってみるとずっしりと重みを感じた。




今まで一番分厚く、重かった。




俺は家に帰って見るまでの時間が惜しく、下駄箱に腰を下ろした。






題名は…『君と過ごした日々』。







未風の得意の恋愛小説だ。




いつもより読むのに時間がかかった。




だが…やめられなかった。







最後、この主要人物である二人は…




想い合っているのに、進路の違いで離れ離れになってしまう。





涙なしじゃ読めない感動の物語だった。





…そして。





俺は最後の1ページをめくった。




そこにはいつもの最後の未風のメッセージはなかった。













書き忘れかとも思ったりした。



でも。






「っ…!!」





しばらく考えて…俺はようやく気づいたのだ。





未風にはもうメッセージなんて必要なかったことが。






「未風…っ」










…この小説の全てが彼女のメッセージだったのだ。






そして、俺は…遅かった。











儚い、未風の想いに気づくのが。
< 4 / 19 >

この作品をシェア

pagetop