始まったばかり
「返して。ないと見えないの…」


「嘘だろ?このくらい近付けば見えるはずだよ。見えないなら…」


美月の視界は涙で歪む。でも、真剣な彰人の瞳ははっきりと見えた。彰人がよく見える距離に近付いたからだ。

でも、彰人はその距離で満足出来なくて、さらに近付く。近くなり過ぎて、どうしていいか分からなくなった美月は目をつぶる。


チュ


「え?何?」


彰人の唇が自分の唇に触れたことに美月は驚く。美月にとって、ファーストキスだから、今起こった状況が読めなかった。


「言ったよね?俺が好きなのは美月だって。美月はやっぱり俺のこと、嫌い?怖い?」


自信がないのは彰人も同じだった。真面目で優しい美月に惚れたが、いい加減ですぐイライラする自分は相手にもされていないと思っていた。

でも、抑えられない気持ちを美月に伝えたのだ。


「私も香川くんが好き」と言ってくれたけど、あれは夢だったんじゃないかと何度も不安になった。




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