始まったばかり
美月が冗談を言う人ではないことは分かっているが、半信半疑になってしまう。


「うん」


嘘ではない本当の気持ちを素直に伝えたい。美月はまだ眼鏡を外したままだ。彰人がよく見える距離に近付く。


「美月。近い…」


近付く美月に彰人の鼓動は早くなる。


「だって、彰人をちゃんと見たいんだもの。眼鏡返してくれないから」


美月の瞳はもう涙で潤んでいない。彰人を責める目をしていない。優しい目をして、彰人を見つめる。


「そんな目で見られたら、我慢出来ないよ」


「え?何を?」


恋愛経験の乏しい美月には彰人の言う意味が理解出来なかった。かわいらしく首を傾げる美月の顎に彰人は手を添える。


「大人のキスを教えてあげる」


「え?ん…ん!…」


我慢の出来ない彰人の唇がまた美月に触れる。2回目のキスは触れるだけのかわいい子供のキスで終わらなかった。
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