禁じられた放課後
「先輩じゃなくて『吉原先生』だろ。僕は高校への赴任自体初めてだよ、ずっと中学だったし。それに国語教師は数人いるけど英会話は僕一人。負担的に僕の方が大変だと思わないか」
「いや、国語と英会話じゃ授業数が全然ちがっ、うわっ」
今しがた片づけ終わった段ボールと資材のほとんどを山根に担がせ、直哉は倉庫へ運ぶよう促した。
妙な気分だった。
たとえばタバコを一服しようと思った貴重な時間を奪われたような、ほんの些細な不満。
目にすることができたかもしれないものを見逃した時の、心に残る空虚な思い。
山根が悪いと思っているわけではない。
ぶつける場所が今はそこしかなかっただけ、そしてそんなふうに感じてしまう自分が腹立たしかっただけだった。
「っとに……、いつかオレに頼りたいことができても助けませんよ」
「はいはい、多分そんな日は来ないから」
険しい目をして山根が廊下を歩いていく。
すりガラスに映る影。
そして向かい側からもう一人。