禁じられた放課後
「そういえばすっかり言うタイミングが無くなってしまっていたけど、今年度の研修メンバーにひとつ空きができたらしくてさ。筒井校長に誘われたんだ」
呟くように小さく話す直哉。
「そう。おめでとう、直哉」
美咲の言葉に、直哉は思わずその切れ長な瞳を見開いた。
言葉も詰まる。
「直哉の夢が近付くのね」
「……君の夢でもあっただろ?」
美咲は首を横に振った。
直哉は眉を寄せ、美咲の方へその上体を近付ける。
それでも今は、美咲に触れることはできない。
「直哉は一目惚れって信じる?私はね、そんなもの信じたこともなかった。運命さえも、ただの空想だと思ってたわ。
でもあなたに……直哉に出逢ってそんな考えも無くなった。私は一目であなたに惹かれて、その先に見える運命を共にしたいと思った」
「美咲……」
「あなたと追う未来が私の夢。だから、あなたの隣で叶えられないのなら、それはもう私の夢じゃないの」
美咲は一枚の紙を差し出した。
昔から白く細い指先だったが、目の前のそれはもっと力ない感じがする。
「でも直哉は違うでしょ?私と叶えられなくても、あなたの夢はそれそのもののはず。私の分も、叶えてね」