禁じられた放課後


笑顔を見せられる者の片隅には、必ずとは言えなくても唇を噛み締める者の存在がある。

それでも人は、その先にある可能性から目をそらすわけにはいかないのだ。



直哉が夢を追うことで、笑顔を手に入れることができる存在はこれからもきっとあるだろう。

それはこの先教壇の前に座る生徒たちかもしれないし、さらに先に出逢うであろう人たちかもしれない。



直哉は自分の立場を見失うわけにはいかなかった。

自分に与えられたこと。

勝手だと知りながらも、手を伸ばす先にある夢を追うことが、今の自分にできる全てへの償いな気がしていた。




重々しい扉から表へ出る。

空の青が目に痛くて、理由も分からない涙がひとつ流れた。




< 111 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop