禁じられた放課後
「えー、4月にこの桜台高校に赴任して来たばかりの僕ですが、このたびこの学校を早々と去ることになりました。まだ関わる機会がなかった生徒もいる中で、本当に後ろ髪引かれる思いがないわけではありません。寂しい気持ちもいっぱいです。しかし、実は僕にはずっと以前からの夢がありました」
たくさんの生徒の陰の隙間から、輝くように夢を語る直哉が見える。
そして、その夢に近付くことができそうな今、直哉はその夢に向かってさらに前へと歩むことを決めたと生徒たちに話しているのだ。
「みなさんにもいろいろな夢があると思います。そこへたどり着くまでには、たくさんの苦難はあるものです。だから、決してそれらを諦めないでほしい。
そしてそれは何も自分のためだけじゃなくて。夢を前に進む君たちの姿を見て、また勇気をもらい変われる存在が近くにいるかもしれないということを……」
直哉の視界に涼香が映る。
偽って来た気持ちは最終的に何を残したのか。
偽らなければまた違った別の道が現れていただろうか。
ただ、結果的に同じ答えが出るものだとしても、変えられない運命があるとしても
「忘れないでください。後ろを振り向けば変えられないことも、宇宙の星がわずかづつ移動していることと同じように、前を見れば変わっていく未来がある。決まってしまっている結果などないのです。
見えないほど些細なものかもしれいけど、先にある運命なら……変えられると僕は思っています」
出逢った運命などもう変えられない。
それなら、見るものは先しかない。
堂々と演説しては見せたものの、直哉の涼香に対する想いがきちんと整理されたわけではなかった。
でも、今先を見て歩む自分の姿を見せることで、涼香にも前へ進んでほしいという願いが込められていた。
「明日僕はアメリカへ発ちます」
ここからまた、別の道がのびて行くのだ。