禁じられた放課後
山根が去ると涼香も直哉の元を離れた。
その背中を追うようにして、思わず出てしまった右手に戸惑う。
呼び止めることすら後ろめたい。
自分の感情と行動すべてが、正しいことではないような気持ちに襲われた。
何のために涼香を呼ぶのか。
「あ、ちょっと。……バス行っちゃったけど。帰り大丈夫か?」
声を出してから自分に言い訳をする。
バスの時間を心配してあげただけだ。
もちろん一人の生徒に対する、一人の教師としての役割で。
「私、バス通学じゃないんですよ。今朝は偶然乗っていただけです」
廊下の西には吹き抜けた天井へと広がる大きなガラス窓があった。
そこから入った陽の光をスポットライトに、直哉と涼香がステージを歩み寄る。
その二人が幸福な主人公になり得るのかはまだわからない。