禁じられた放課後
止まった時間を星の瞬きとともに過ごす。
一時的に帰国しただけで、数日後には再びアメリカへ戻る直哉のことを聞いた涼香は、何か言葉を見つけられるわけでもなく、ただ直哉に寄り添って空を見ていた。
少しずつ増えて行く星の数と溢れる想い。
何かを告げれば、そこから返ってくる言葉を待たなくてはならない。
それがやっぱり恐くて、涼香は繰り返し直哉の顔を覗き込みながら想いを飲み込んだ。
もうすぐ、山根達が戻ってくる。
「そろそろ見え始めてもいい頃かな」
直哉が涼香の手にある星図を確認するようにその体を近付けた。
思わず涼香の呼吸が止まる。
無理に想像をとめようとしても、強い気持ちが勝手に願いをかけてしまう。
「先生……」
「ん?……」
近くで見つめ合ってしまえば、導き合う運命はもうそれを止めることができない。
言葉を出そうと必死になると、代わりに涙が止めどなく溢れた。
「せん…」
直哉の右手が、その流れる涙にそって涼香の頬を包む。
切なさに胸が焦がれ、聞こえる音は最小限の風にまで落とされた。
「もう、泣いて欲しくない」
涼香がまぶたを閉じると、流れる星明かりとともに二人の影が重なった。
夜空に架ける流星群の橋。
たとえ何かが二人を引き離そうとしても、再び導き合う星の元に出逢った運命。