禁じられた放課後
酔いつぶれた山根を定期便の過ぎ去ったバス停のベンチに座らせると、直哉はスーツポケットのタバコを探った。
箱の中が空なことに気付いて山根を揺さぶってはみたが、目を覚まそうともしない様子に溜め息が出る。
仕方なく直哉はポケットにライターを滑り込ませた。
今日あった出来事を順に思い出しながら空を見上げれば、風に散る桜の花びらも流れ星のように願いを誘う。
消そうとする、いや、気付かないように抑え込む感情を、あぶり出そうとするように何度も視界を流れていくのだ。
直哉は涼香を浮かべそうになる自分に呆れてメガネを外した。
額の上で拳を作り、無理矢理でもなく美咲の顔を思い出す。
美咲が好きで、美咲を愛し、美咲と共に夢を追いかけてきた。
この想いは、美咲一人の為にあるものだと直哉は自分の中で繰り返す。
他の感情なんて、生み出す必要もない。
「タクシー呼びましょうか。他のメンバーはもう帰りましたから」
いつの間にか近くに寄って来た鞘野が携帯を開いて隣に座った。