禁じられた放課後
「ありがとうございました。これからよろしくお願いします」
タクシーの中に残る鞘野に頭を下げ、直哉はテールランプを見送った。
「直哉」
後ろから歩み寄る美咲。
風で舞う髪を押さえ、直哉の袖口を引くように掴む。
「あぁ、美咲。ただいま」
振り返り見下ろす直哉の視線が、痛いほどの優しさを表わしていた。
そしてその胸に埋もれてしまえば、不安さえもなくなってしまうのではないかと錯覚してしまうのだ。
「今の人は?」
「音楽の鞘野先生。僕より二つ上らしいけど若く見えるだろ?」
「そう……」
ほのかに暖かい夜風に打たれながら、二人は寄り添い互いの温もりを求める。
その理由がなんであろうと、今の二人には関係ない。