禁じられた放課後
「吉原先生、今日は大丈夫ですか」
教室の扉に隙間を作って、涼香が直哉の様子を伺った。
丸い瞳と口元が少し見えるだけのその姿に、思わず直哉の顔にも笑みがこぼれる。
「あぁ、いいよ。そんなふうに遠慮しなくても普通に入ればいい」
新学期が始まってすぐのあの日以来、涼香は週に三日ほど直哉の教室を訪れるようになっていた。
英会話に興味があるからと訪れる理由を無理に作っていた涼香も、日を重ねるごとに本来の目的であった星の話をするようになる。
「ねぇ先生。英語で書かれてる星の物語があるの。それを今度訳して欲しいんだけどな」
「自分で調べながら訳すのもいい勉強になると思うけど」
直哉の言葉に肩を竦め、拗ねるような表情を見せる涼香にまた直哉は心を揺らされる。
授業に使った単語のパネルを整理しながら、強く打ち付ける胸の鼓動を沈めようと必死だった。