禁じられた放課後
落ち込むような表情だった涼香が柔らかく笑った。
つられて直哉も笑うが、そんなに明るい雰囲気は作れていない。
日が沈みかけてるせいもあるのだろうか。
少しの沈黙の後、再び涼香が言った。
「今年新しく星を眺める会に櫻井瑠未さんて子が入ったんですよ。先生のいた中学の子でしょ」
それを聞いて直哉が喜ぶはずもなかった。
悪いわけではなく、困るわけでもない。
ただ直哉と美咲のことを知っている瑠未が涼香に近付くことは、なんとなく嬉しいことではなかったのだ。
「だから知ってるのか。美咲のこと」
まるで別れ話でもするような二人の間に流れる空気。
自分の想いが迷惑をかけるのではないかと悩む涼香の気持ちに、直哉はうっすらと気付いていく。
夕陽が沈むと同時に教室は暗く狭くなるように感じられた。
近くにいる相手がこれ以上遠くならないように、それでも決して近付くことはないように。
互いの距離を確かめながらも、二人の想いは陽を覆う雲のように赤く重ねられていく。
「先生、好きになってもいい?」
静かな教室で、震えるような声が小さく響いた。