禁じられた放課後
伝わらない声
机の下でかすめた二人の指先が、瞬時に遠く離れて行く。
ほのかに残る余韻。
そして外部の存在を気にしながらも、なぜか互いを見つめる瞳は離せない。
さっきまでとは違う教室の気配に感じる戸惑いと悔しさ。
何も望まないはずの二人にとって、触れ合うことなど想像の中でさえ間違いだった。
「What relations are you?」
(どんなご関係かな?)
入り口の柱に寄り掛かり、光に透けた埃の中で早川が直哉と涼香を眺めていた。
腕組みをしたままゆっくりと歩み寄り、腰をかがめて直哉に顔を近付ける。
口元だけをわずかに緩ませ、鋭い目つきで二人の間を覗き込むのだ。
「It becomes a problem if only the student and you are in the room. 」
(生徒と二人きりになるなんて、問題になりますよ)
「The act that you imagine has not happened.」
(あなたが想像しているようなことなどありませんから)
「Is it so? However, she is visiting here well. 」
(そうですか?彼女はしょっ中ここを訪れているじゃないですか)
「It only studies in the reserve. Is there a problem?」
(予備学習をしているだけです。それに何か問題でも?)
怯むように身体を起こした早川が、その視線を横流しに涼香へ送った。
理解できない会話を前に不安と恐怖を抱える。
涼香は思わず下を向いた。