禁じられた放課後
足の先から力が抜けて行くのが分かる。
涼香は、座り込みそうな自分の身体を必死に支えていた。
通じ合う想いがなくても、迷惑だと思われているなどとは想像もしていなかった。
少なくとも、あの二人の時間は直哉に受け入れられているものだと感じていた。
「それに私だって少しなら英会話を教えてあげられるよ」
「……そんなの、必要ないですからっ」
肩に回される腕を払いのけ、涼香は教室を飛び出した。
玄関までの廊下がいつもより長く感じる。
走っても走ってもまるで出口がないように、心が行き場を失っていた。
「It's unpleasant that there is a student who chooses him.」
(私より彼を選ぶ生徒がいるのは気に入らないんだよ)
早川の見下ろす窓の外を、涼香は傘もささずに走っていく。
波紋が重なる水たまりを気にもせず、雨に身体を濡らしていた。