禁じられた放課後
久しぶりの待ち合わせに心が踊るのは仕方ない。
駅のガラス扉に映る自分を何度も確認して、美咲は直哉のバスが到着するのを待っていた。
オレンジのストライプ傘は直哉とお揃いのもの。
今日は雑誌に掲載されていたカフェに寄り、それからレイトショーの映画を観る。
雨降らす空に関係なく、美咲の気持ちは晴れやかだった。
やがてセンタービルの陰にバスが見えると、少し歩きづらいヒールでつま先を伸ばし歩道を迎え歩く。
到着したバスから降りてくるいつもの直哉の姿。
「おかえりなさい。直哉……メガネは?」
「じゃん!お久しぶりです、ミセス吉原っ」
直哉のメガネを掛けた瑠未が後ろから現れ、美咲は一瞬驚いた。
それから笑って傘を差し出す。
「櫻井さん!そういえば直哉と同じ高校だったのね。さぁ、濡れないように早くこっちへ来て」
美咲の傘の下で自分の傘を準備しながら、瑠未はメガネの奥から美咲の顔を覗き込んだ。
「ミセス吉原はなんだか嬉しそうですね。なるほど、久しぶりの愛する夫とのデートがそんなにも楽しみだったと言うわけだ。うん、なるほどなるほど」
変に頷きふざける瑠未に美咲は顔を赤くした。