禁じられた放課後
透通るブラウンの丸いテーブルの上で、雨上がりの夕陽にアイスコーヒーが小さな光を見せた。
美咲は映画の時間を確認して、それからそのカフェの掲載された雑誌をまた直哉に広げて見せた。
オススメのデザートも紹介されている。
「ねぇ見て。こんな可愛い小物も販売されてるんだって。直哉こういう感じのもの好きでしょ」
嬉しそうに直哉を見上げれば、当の本人はぼんやりとテラスの外を眺めていた。
タバコの灰が今にも落ちそうになっている。
「直哉……聞いてる?」
「今日は流星群が見えるんだそうだよ、西の空に」
直哉はまったくこちらを見ようともしなかった。
「ええ、知ってる。新聞で見たから」
美咲は雑誌を片付けてあの冊子を取り出した。
心の中では、断られることも自然と覚悟している。
「直哉、来年度の研修のことだけど……」
「あぁ、申し込まないとな」
ふと顔を上げた時に見える直哉の笑顔。
「い、いいの?」
遠ざかるように感じていた直哉をまた近くで想えるような気がして、美咲はその不安を抱いていた胸の中に大きく安堵感を染み渡らせていた。
少しでも直哉を疑おうとしてしまった自分の非。
直哉の夢に対する思いを再び確認できた喜び。
その全てが涙を誘う。
西の空に陽射しが戻っても、その心は変わらないと信じていた。