禁じられた放課後
店を出た正面のビルには、雲を追いやって強く光を放つ陽が眩しく反射を見せていた。
さっきまでの沈んだ色は遥か南の空に消え、街路樹の葉の雫に輝きを与える夕暮れの陽が街全体を照らしている。
「直哉、行きましょう」
玄関先のつい立てからニ本の傘を抜き取り、美咲は直哉の腕に手を回した。
白にも見える明るい黄色が、直哉の顔を無表情にさせている。
きっとそれは、陽の光でメガネの奥が見えなくなっているせい。
そう自分で納得させながら歩き出そうとした時だった。
「あれ?先生たちまだここにいたんですか」
振り返る先に立つ瑠未の姿。
もう職場での直哉を想像することはやめたいのに、思い出させるように現れる桜台高校の制服。
直哉もまた、空を撫でるようにゆっくりと振り向き瑠未の姿を確認した。
陽が高い季節とはいえ、もう時刻は七時を回っている。
「まだ帰らないのか?」
直哉が雨上がりに滴をたらす傘を美咲から受け取り、先を急ぐ仕草を見せた。
「晴れ間が見えてきたから、もしかしたら流星群が見えるかもしれないし。これから学校に向かおうかと思ってたんです」
「……そうか。気をつけて行くんだぞ」