禁じられた放課後


再び西の空を仰ぎ、直哉は星を語る涼香の様子を思い出していた。

そしてさっきのバスに走り込む濡れた姿。

もしかすれば早川があのことを伝えたのかもしれない。

それで涼香が傷つくことも分かっていた。



心に重荷を感じながら、直哉は美咲に行こうと頷き合図を送る。

そして次の瞬間突然耳に入り込む軽快な音色。

それは瑠未の携帯着信を知らせるものだった。



「え?そうなの?これから学校に向かおうと思ってたのにぃ。うん、流星群見ようと思って。うん、うん。そうかなぁ。わかったよ。すぐ帰るから」



不満を出すように口を歪ませながら、瑠未は直哉と美咲に手を振った。



「雲が多いから無理じゃないかって、うちのお父さん。しかも会合に出るから弟たちの面倒見とけって。結局行けなくなっちゃった」



苦笑いを見せながら去ろうとした瑠未に、直哉は引き戻すように声を掛ける。



「櫻井。お前たちの活動、顧問がいないんじゃなかったのか。こんな時間からどうやって……」



美咲は直哉を見上げた。



「滅多にない活動ですから。そういう時は日直の先生がついてくれます。でも今日は誰も来ないかもしれないし。雨が上がったばかりだから」



そう言い残し、瑠未は駅の方へと走って行った。

陽が沈み空はぼんやり青白くなる。

美咲は直哉の横顔に不安をよぎらせた。

もう光らないメガネの奥で、今はハッキリと直哉の視線の先を確認することができるのだ。



「学校へ行くの?」





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