禁じられた放課後
望遠鏡の置かれたガラスケースのカギは日直用のカギと一緒につるされている。
涼香は何も持たないまま、ログハウスの屋根で一人大きく広がる夜空を眺めていた。
少しずつ雲が引き、月がその神秘的な姿を現そうとしている。
携帯の時刻を確認して、涼香はまた空を見上げた。
この薄い紺青の空に流れる星を、直哉と見られる日はいつか訪れるだろうか。
ギシッ
涼香の背後で物音が聞こえた。
「鞘野先生……ですか?」
少しずつ、ゆっくり時間をかけながら、その物音の方向に月の光が差して行く。
「……早瀬」
もう人影もない廊下で、直哉は鞘野の背中に呼び掛けた。
「鞘野先生、こんな北校舎の奥に星を見られる場所なんてあるんですか?」
少し焦りを見せた直哉は、キツイ言葉ともとれるような言い方でそのまま足を止めた。
そして鞘野は静かに振り返る。
「いいえ、活動場所はここじゃありませんよ」
何かを企むようなその姿に、直哉の手は汗をにじませていた。