禁じられた放課後
禁じられた夜
夜の校舎がその周りの建物にくらべて一層暗く見えるのは、日中の生徒たちのざわめきや笑い声が消え去り、全く別の寂しい空間が作られるせいだろう。
そしてその差が、こんなにも大きく白い建物を黒く沈んだ陰に見せてしまう。
湿気を含んだ風は、なお重々しい。
「早瀬、こっちに来て手伝いなさい」
早川がガラスケースの鍵を開けて望遠鏡を取り出した。
三脚を小脇に抱え再び階段を上がろうとする様子を、涼香は天窓から見下ろし荷物を受け取るその手をゆっくりと伸ばす。
屋根に作られたデッキは、人が三人立てばもうその範囲をいっぱいにしてしまうが、今日はいつもよりもさらに狭く感じられた。
今自分の隣にいるのが早川だということが、こんなにも気持ちを落胆させ、澄んだ気持ちを憂鬱にさせていくのだ。
涼香は口を開くこともなく、ただ黙ってレンズの方角を調整した。