禁じられた放課後


「本当に今日見えるのか」



早川がズボンのポケットを弄る。

そして反対側の手でYシャツのボタンを二つほど外した。



「タバコはやめてください。一応生徒専用の活動場所ですから」



顔をこちらにも向けず平たんな口調で言った涼香を横目に、くわえようとした指の間のタバコを一回転させ、早川はそれをまたポケットにしまった。

細める目蓋が不機嫌さを表わす。



「早瀬、私はとくに何も悪いことはしていないはずだけどね。放課後のキミをよろしくと頼んだのも吉原先生の方だ。私が好んで自分から引き受けたわけでもない」



手摺に背もたれ早川は天を見上げた。

涼香が動きを止め静かに上体を起こす。



「私は何も……別に何も気にしていません」



フッと息を吐き再びレンズを覗く涼香。

その隣に一歩近付き早川は静かに耳打ちをした。



「吉原先生のことが好きなんじゃないのか」
 



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