禁じられた放課後
「違いますっ。本当に……」
涼香は早川に掴まれる手首を無理にねじらせてその手を振り解こうとする。
それをまた強引に引き寄せられ、涼香はバランスを崩しデッキに倒れ込んだ。
「まったくキミなどに興味はないけどね、私より吉原先生を選ぶという所が気に入らない」
覆いかぶさる早川の後ろに広がる星空が、悲しいくらいにキレイに見えた。
教師と生徒の距離は計り知れなく遠い。
たとえ生徒たちに手を出しているという早川の悪い噂を聞いたことがあったとしても、今この体を押しやることさえできないのだ。
そして直哉にも、無理に近付くことすらできない。
せめて思っている全てを言葉として伝えられたなら、どんなにも心安らぎ微笑むことができるだろう。
涙が耳元に流れる。
握られたままの腕に痛みを感じながら、涼香は星の声を聞くように耳を済ませた。
屋根にかかる大きな広葉樹の葉がカサカサと音をたてる。
風が、前髪を優しく撫でた。
「……せ、早瀬。早瀬、いないのか?」
「っ、山根先生っ!」