禁じられた放課後
ふいに力を弱められた早川の手から自分の腕を抜き取り、涼香は天窓から下を覗き込んだ。
「早瀬、やっぱり来てたのか」
笑顔を見せて迎える山根。
涼香は梯子を足早に降りると、そのまま山根の後ろへと走り込んだ。
細い背中にしっかりと掴まり、顔を押し当て大きく深呼吸をする。
「早瀬……お前、もしかして泣いてる?」
山根は自分の背中で大きく首を振る涼香を気にしながら、再び天窓を見上げた。
「早川先生」
「山根先生……まだ残ってらっしゃったんですか」
後ろにいる涼香の様子を確認して、山根は少し表情を強張らせた。
「早瀬、送ってやるからオレの車の所へ行ってろ」
涼香は小さく頷くと山根の背中を離れ、北校舎と南校舎の間にある通路を小走りに校門前へと急いだ。
やがて視界に広がるグラウンド。
そしてその上でもっと大きく広がる星空に気を惹かれ、涼香は思わず立ち止まった。
「雲……全部なくなった……」