禁じられた放課後


もう誰の声も、自分の鼓動さえ感じられなくなりそうだった。

涼香は逃げるように教室を飛び出した。



あの時倒れてしまった涼香に、早川が何かをしようとする様子はなかった。

それでもその表情から恐怖を感じ、山根の助けに救われたのは事実。

でも……



「あ、早瀬。今日の授業で使った……おい、早瀬」



呼び止める早川の声に立ち止まれば、再び注がれるたくさんの視線。

まさか早川が自分でそんなことを生徒たちに言いふらすはずはないだろう。



帰宅時間でざわめくの玄関を避け、涼香は裏手の体育館からログハウスへと向かった。

一刻も早く人目の無い所へ。

三階の教室の窓からは、鞘野が静かにその様子を見下ろしていた。




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