禁じられた放課後
時計の針が9時を回る。
暗い校舎にぽつりとひとつ灯る職員室の光の中で、直哉はタバコの煙とともに時を過ごしていた。
こうして自分の身の回りの整理をした4月がつい先日のように感じられる。
もう、こんなに早く片付けることになってしまうとは思ってもいなかった。
あの日、涼香と出逢ったことですべてが変わった。
そしてまた、今新しい道ができようとしている。
この道が正しいのかなんてわからない。
ただ、美咲と夢を語り続けてきた日々も、決して輝きの無いものではなかったのだ。
ふと携帯を取り出し美咲の番号を表示する。
今夜はちょっとした夢への一歩のお祝に、外へ食事にでも誘おうと直哉は考えていた。
ボタンに指を触れる。
その瞬間、直哉の携帯が振動とともに鳴り出した。
「もしもし、美咲?ちょうど今そっちにかけようと思ってたんだ」
「そうなの?今日少し遅くなるから」
「なんだ。まだ学校か?」
「ううん、そうじゃないんだけど……(まじで約束守んのかよ)ちょっと、静かにしなさい。(まさかオレら補導されたことになんねぇよな)直哉、ごめんなさい、少し見回りをして帰るから」
「誰かいるのか?」
「うーん、ちょっと生徒がね。でもそんなに遅くはならないと思うから」
再び音の無くなった耳もとで、直哉は少しの胸騒ぎを感じていた。
もともと美咲と働いていた中学には荒々しい生徒も多かった。
もしかして美咲の手に負えないような生徒を補導しているのではないだろうか。
「ちょっと心配だな」
そう口から出た時には、もう直哉の足は繁華街に向かって動いていた。