先生の手が触れる時

「………その絵、未完成なんだ」
「!」

その声に慌てて涙をふく
ゆっくりと近づいてきたのは若くて真っ黒な髪を少しのばし、絵具のついた白衣のようなものを着てる人だった

「……あ、えっと……」
「教材を取りに来たのかな?」

黒渕の眼鏡をかけた彼の眼鏡の奥の瞳が優しそうに歪む

「…はい…」
「少し待ってて」

そう言うと、近くの棚を探し始める
どうやら彼が緑川先生らしい。

「この絵、未完成なんですか?」
「ん?…あーそうだよ」
「何が、足りないんですか?」

そう問うと先生は少し間をおいてにこりと微笑んだ
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