先生の手が触れる時
「うん、だからその求めてるものが思い付くまでは未完成のままだ」
「…もしもこの子、落ちるしかなかったらどうなるんでしょう」
「え?」
「…何もすがるものがなくて落ちるしかなかったら…」
私がそう呟くと彼はまたもや微笑んだ
「…僕はね、人間は何かに抵抗してるときが一番美しいと思う」
先生の唐突な言葉に耳を傾ける
「這いつくばってでも、何かにすがりついてでも、どんな暗闇にいたって、死にたくたって…抵抗してるときが一番美しい」
「………」
「人間は何かにつけて楽することを選ぶ。不幸ならその不幸を受け入れてしまう。抗うこともしないだろう?僕なら抗うよ…」
「どうして?」