先生の手が触れる時

「絵の具はそこに置いといて」
「はい…」

言われたとおり絵の具を置くと、先生も持っていた絵の具をその隣に置く

「……ふっ……分かりやすいやつ」
「だって…分かってても……気になっちゃうじゃないですか…」
「うん」
「…自分がまだまだ子供だって、早く大人になりたいって思ったんです」

素直な気持ちを言うと先生は私を抱き締める

「そのままでいいんだけどなぁ。俺は、今の遠野凪が好きだよ」
「………っ」
「…例えば、田宮先生なら…ドアに鍵をかけたりしない。田宮先生なら…こうやって抱き締めたりもしない」

優しい声で、私を落ち着かせてくれる
嫌な感情がだんだん溶けていく
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