先生の手が触れる時

『そう。なら、私は何もしない方が良さそうね。あなたの境遇も悪くなるだけよね』
「はい…」

私がそう呟くと
優人のお母さんは小さなため息をついた

『今日は、優人を頼みます。それと…もし限界が来て、警察に連絡するときは教えてちょうだい。私の見たことを話してあげるから』
「……あ…ありがとうございます…」
『驚いた声してるわね』

そう言われて言葉がでなかった。
少なくとも、私たちと家族であったときはこんなことを言う人ではなかったから

『…あれから大分経ってるわ。私だって冷静になった。それに……今の人がとても優しいからかしらね』

その声が本当に柔らかくなっていて
何故だか無性に先生に会いたくなった

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