先生の手が触れる時

「……今日は、帰ります」
「あぁ」
「……先生」

しばらくして落ち着いた私は帰る仕度をして窓際に立つ先生を見つめる

「先生…先生のお母さんは…きっと怒ってないよ。先生がこうやって教師になって…きっと喜んでる。だから」
「…………」
「大丈夫です」

そう笑うと先生は私の手を掴んで
そしてそのまま思いっきり抱き締められる

「先生?」

呆然と先生に声をかける
その回された腕からは余裕がないようなそんな感じが伝わる

「……っ!」

先生はハッとしたように体を離すと困ったように笑う

「…悪い……また今度な」
「はい」

私は不思議に思いながらもそのまま美術室を後にする

このときもっと、先生を見てればよかった
忘れないくらい目に焼きつけていたら良かった

そしたら、先生と離れても悲しくなることはなかったのかもしれない





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