先生の手が触れる時

しばらくすると
家のチャイムが鳴る

「はーい」

私は優人が来たと思い、ドアを開けた

その瞬間

まるで、自分の体が何かに捕まれたように動かなくなる


優人、そう微笑みかけようと視線を下に向けていた。

だけど、その視線が映したのは

優人ではなかった。

黒い革靴に、黒いスーツ

私は、彼、を知っている



「………お父さん………」


自分の声が頭に響いた。
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