先生の手が触れる時

雪夜side


出ていったドアを見つめ呆然と立つ

入れかけのコーヒー
まだ微かに鼻をくすぐる彼女の匂い
最後に見せた笑顔

「…………くそっ」

机を叩いてみても、血が滲むほど手を握りしめても
空しいだけだ

ずるずると机に背を預けながら座り込む
窓から光がさして
ゆっくり自分の前にかざした手

この手が彼女をもっと強く握っていたら
離れることはなかったのだろうか?

そう考えて、どさり、と手を下ろす

いや。きっと彼女はこの手を離しただろう

ただ俺はその離された手を掴む勇気がなかった

それだけだ

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