先生の手が触れる時
「………俺は…何やってるんだろうな」
そうぼそりと呟けば、信はそんな俺をじっと見つめる
「どうした?ライバルでも現れたか」
その言葉に思わず苦笑いがこぼれる
「……あぁ。そいつに、何で必死にならないんだって言われたよ」
「ほう。良い男だな、そいつは」
「あぁ」
信は煙草をふかしながら、さっきまでの笑みを消した
「……何だ?お前が必死こいてないのなんて分かりきってることだろ。そうやって逃げてんだろ?あの子の傷から」
「……っ!」
その言葉に返す言葉は見つからなかった
そうだ。
俺は、逃げた。
アイツが離れてくのを止めなかった
必死こいてその手を掴もうとはしなかった