先生の手が触れる時

アイツの傷に触れることを心のどこかで遠ざけた

怖かった。
その傷を知って自分が救うことができなかったら
あの子は幻滅するだろうか

「……そうだよ…俺は…あの子から逃げた。ずっと…人と正面切って話すことから逃げてきた…そして、一番救わなきゃいけないあの子と…向き合うことを恐れた」

ぐっと爪のあとが残るほど自分の手を握りしめた

「………それがわかってんのに…なんで今、必死にならない?」
「!」
「……お前がずっとその弱さを見て見ぬふりするなら……そのライバルとやらに渡せ。お前が今、あの子のそばにいたとしても……救えないだろうよ」

渡す?

深山が前に、あの子はいつか壊れる、とそう言っていた

俺は、文化祭の日
吉宮の前で泣いている凪を見てそのまま吉宮の前から奪いさって、この手でその涙をぬぐいたいとまで思った

< 272 / 342 >

この作品をシェア

pagetop