先生の手が触れる時

『本当の親でも愛してくれない、愛しかたが歪んでる』

『私は父から逃げてる』

そして深山の、壊れる、という意味

「………あるのね…思い当たるところが」

そう呟いた絵理子さんは少し寂しそうだった

「…あぁ。考えたくもない可能性が…ハッキリしそうなぐらいだよ…」

俺が苦笑い混じりにそう答えれば
二人ともため息をついた

「ずっと……暴力だけだと思ってた……アイツがたまに溢す父親への言葉は…暴力のことだと思ってた…けど」
「それもあると思うわ。でも…よく考えて………暴力だけなら、傷も見られてる雪夜くんに言わないはずないわ」

そうだ。
あの子は必死に何かを隠そうとしていた

そして初めて保健室で傷を見たとき確かにあの子は言った

『私は汚れている』と

俺はやるせない怒りをぶつけるように
自分の手を強く強く握り締めた


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