先生の手が触れる時
そんな晴夏の後ろ姿を見て
私はゆっくり立ち上がり
ある場所に足を向けた
「………久しぶりだなぁ…」
そこは美術室
ちゃんと、ハッキリさせなきゃ
ゆっくりドアを開ければ懐かしい匂いが鼻をかすめた
「………失礼します」
そう小さく呟いても、返ってくる答えはなくて
それに少し安心を覚える
変わらないキャンバスの数々
絵の具の匂いに混じるコーヒーの香り
「………」
先生の、匂いだ
何ヵ月も離れていたからか胸がぎゅっと締め付けられる
窓からさす光も
机の上に散らばる何枚もの絵も
あのときのままだ